2024/03/27作成
不動産登記法の改正により、令和6年4月1日から相続登記の申請義務化がいよいよスタートします。(民法・不動産登記法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号))。
今回は義務の内容ではなく、義務に違反した場合の過料について少しご説明します。改正された不動産登記法では、いわゆる相続登記の申請義務を負う者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは10万円以下の過料に処するとされました(改正不動産登記法164条)。では、官庁(法務局の登記官)はどのように申請義務違反を把握し、どういった方法により過料に処するのでしょうか?!
過料が科される場合の流れ
STEP1:登記官による申請の催告(催告書の送付)
登記官は次に掲げるいずれかの事由を手がかりとして、申請義務の違反者を職務上知ったときに限り申請の催告を行うとしています。
①相続人が遺言書を添付して遺言内容に基づき特定の不動産の所有権移転の登記を申請した場合において、当該遺言書に他の不動産の所有権についても当該相続人に遺贈し、又は承継させる旨が記載されていたとき②相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺産分割協議書に他の不動産の所有権についても当該相続人が取得する旨が記載されていたとき
催告において定めた期限内に登記申請がされた場合又は催告後に「正当な理由※」がある旨を主張し、登記官が ”正当な理由あり” と認めた場合には、次の過料通知は行われません。
※正当な理由とは
正当な理由の判断としては、以下①~⑤のような事情が想定されます
①相続人が極めて多数に上り、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
②遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われており、相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
③申請義務を負う者に重病その他これに準ずる事情がある場合
④申請義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
⑤申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合
STEP2:裁判所に対する申請義務違反の通知(過料通知)
上記催告に対して、期限内に申請がなされない場合(又は正当な理由が認められない場合)には、登記官は裁判所に対しその申請義務違反を通知します。
STEP3:裁判所での過料決定
通知を受けた裁判所において、要件に該当するか否かを判断し、過料を科す旨の裁判が行われます。(過料決定:10万円以下の範囲内)
以上が流れとなります。
義務化の決定以降、様々なアナウンスが全国的に広がりを見せていますが、幅広い国民層への影響を及ぼすことを考えると、この新制度のより一層の十分な周知が必要と思われるところです。